「オムツ着用!?」
俺は目を丸くした。こんなところで皆でオムツを着けるなんて…
「どうした高橋。そんなにイヤか?」
池崎が俺の方を見て言った。
「そんなことまで教えてもらわなくても…」
俺の言葉に池崎は
「宿泊の時はちゃんとオムツを着けて寝るのが礼儀ってもんだろ?
 君たちはまだオネショ癖が治ってないんだから」
と言った。
「ぼ、僕自分で着けれます」
横田が手を挙げて言う。
「まぁまぁ。医師から正しいオムツの着け方を教わろうじゃないか。
 もしかしたら間違って覚えているということもあるかもしれない」
「そうです。正しい着け方じゃないと横から漏れることもある。
 君たちは診察したところ一晩の夜尿の量が多い人も見受けられます。
 オムツの正しい着用は夜尿と付き合う第一歩です」
青島医師が柔らかい声で言った。
「そういうことだ。じゃあ服を脱いで」
さっき皆と風呂に入ったとはいっても、
風呂場で脱ぐのとここで脱ぐのでは恥ずかしさの質が違う。
俺たちは脱ぐことを躊躇してお互いの顔を見合った。
ただ一人福田だけは部活で人前で脱ぐことに慣れているのか
戸惑うこともなく下半身をポロンと露出した。
福田が脱いだのを見て他の生徒も渋々服を脱ぎ始めた。
俺もそれに続いた。
大広間で全員が下半身裸でオムツを手にする光景は
第三者から見ればとても異様な光景だったろう。
「それじゃまずオムツを取り出して、縦に全体を引っ張ります。
 こうしてオムツについたシワをよく伸ばすことが事前準備として必要です」
医師の指示通りにオムツを着けていくが、
オムツを一度も着けたことのない俺にはなかなか難しかった。
他の皆は着用経験があるのだろう。福田も含め手馴れた様子で
オムツを手早く着けていく。
俺だけが取り残された格好になった。
「おいおい。高橋。お前全然できてないじゃないか~
 さっきそんなこと必要ないってなこと言ってたくせに」
池崎の嫌味な声が不愉快だった。
「おい、福田。お前着けてやれ」
早々とオムツを着用していた福田を池崎は指名した。
福田は「俺?」と言いながら自分を指差した。
「自分で着けれないんだからしょうがないだろ?
 ほら、そこに寝転がれ」
池崎が冷たく言い放った。
「だ…大丈夫です。自分で着けます!」
俺は慌てて言ったが、
「もう時間がないんだ。福田に着けてもらえ」
いかにオネショ仲間とはいえ、同級生にオムツを着けてもらうなんて
恥辱以外の何物でもなかった。
「ほら!早く」
池崎が少し厳しい声で言った。
「大丈夫。慣れればフルチンなんて見られても気にならなくなるよ」
福田が小声で俺の耳に囁いた。
昼に医師から「チンコが小さい」と言われたばかりだ。
そんな人より劣るチンコを他人に見られるのはやはり恥ずかしかった。
俺はゆっくりとフルチンのまま布団の上に寝転がった。
手早く福田が俺の尻の下からオムツをさっと通す。
多分チンコを見られたに違いない。
でも何も言わずに福田は俺にオムツをあてがってくれた。
「おい。皆も着けるとこを見てやれ」
池崎が意地悪く言った。
皆顔を見合わせて躊躇していたが、再度池崎が
「恥ずかしさも克服してもらわないと。この先こんな機会も多々あるんだから」
そう言って皆を寝転ぶ俺の前に集まらせた。
「そ…そんな…イヤだ!」
俺は思わず立ち上がろうとしたが青島と池崎に腕を取り押さえられた。
俺は耐え切れず目をぎゅっと瞑った。涙がこみ上げてくる。
皆の視線が俺の下半身に集中したのが気配で分かった。
「なんだ。元高校生の割には結構小っちゃいな。だから隠してたのか」
池崎がバカにしたように言った。
俺はその言葉に悔しさを隠しきれなくなり声を殺して泣いた。

俺のオムツを福田が着け終わったタイミングをはかるように、
住職の矢部が大広間に入ってきた。
矢部が池崎に何か耳打ちしている。
池崎は
「え?構わないんですか?」
と少し驚いた顔をして言ったが、
矢部はにこにこと笑って顔を縦に振った。
池崎は俺たちの方に向き直ると、
「え~今日はオムツを外して寝るように」
と少し戸惑った顔で言った。
生徒の間にどよめきが広がる。
オムツを着けたのは布団を濡らさないためじゃなかったのか?
ここにいるのは最低でも週5以上オネショをする生徒たちだ。
明日布団が洪水だらけになっていることは間違いないだろう。
「意外と宿泊時には緊張もあり失敗しないものだと伺いました。
 私はあなた方を信じたいと思います。
 今日は修学旅行だと思って、
 絶対に失敗しないんだと念じて眠りについてみましょう。
 仏様も見守ってくださいます。
 ただ…布団を濡らした場合はそれなりの罰を受けていただくことにします」
矢部住職の言葉はソフトだったが、黒縁メガネの奥の目は鋭かった。
「こんな恥ずかしい思いをしてオムツを着けたのに…」
俺は一人小声で愚痴った。
池崎は全員からさっき着けたばかりのオムツを回収すると、
電気を消して青島、矢部とともに部屋を出て行った。