「う…うーん…」
両手を大きく挙げて伸びをする福田に参加者皆の視線が集まる。
「おはようございます」
優しく声をかけたのはやはり矢部だった。
福田はすぐに股間の違和感に気づいたらしい。
がばっと起き上がると…
「あぁ…」
と情けない声を出した。
「シャワーを浴びてきましょう。高橋君もいますよ。
 下着は備付のビニール袋に入れてくださいね」
矢部が促すと、福田は恥ずかしそうに立ち上がり、
「俺…何でブリーフなんだろ?」
と首を傾げた。
「夜中に着替えたのです。覚えてませんか?」
矢部が言うと、
「…すいません…寝ぼけてて…」
福田はそれだけ言うと部屋を出て行った。
「やっぱり覚えてませんでしたね…」
吉岡が微笑んで言った。
「あのう…」
板橋が言いにくそうに、
「あのブリーフ僕のなんで返して欲しいんですけど…」
と言った。
「あ、そうでしたね。
 えーと…じゃあ洗濯機回しましょうかね」
矢部が意地悪く言った。
「え!ちょっと!それは…そのままで…」
板橋が口ごもると、
「そんなの卑怯だよ!カッコいい高校野球部員の
 オネショブリーフだったら俺だって欲しいよっ!!」
武井が言った。
「俺もだ!」
「俺も!!!」
皆が口々に言い始めた。
「うーん。じゃあこうしましょう。
 彼のブリーフはこちらで保管いたします。
 会員はいつでも好きなときにここに来て
 このブリーフを手に取ることができるものとします。
 それなら平等ですよね?」
矢部が言うと、皆納得した様子で頷いた。
「板橋さん。それでいいですね?」
板橋は少し不満そうな顔をしたが、
それでも最後は首を縦に振った。
「それにしても彼のオネショ布団はまた格別ですねぇ…」
吉岡が福田のオネショ布団を見つめて言った。
「さすがに2回目だから小さめですけど…」

暫くしてシャワーを浴びた高橋と福田が帰ってきた。
「さっぱりしましたか?」
矢部の言葉に二人は頷いた。
「本日は私達のためにありがとうございました」
と矢部は皆を代表して頭を下げた。
「干すところまでやらないんですか?」
後ろの方から声がした。最年長の小森だった。
「オネショはやっぱり濡れた布団を干すところまでが
 オネショだと思うんです。私のこだわりですが…」
小森の言葉に皆がうんうんと頷く。
「お二人は…どうですか?」
矢部は高橋たちの方を見た。
「別に構やしないですよ」
福田が無表情で言った。
高橋が思わず福田の顔を見る。
「もう恥ずかしいも何もないだろ?
 一番恥ずかしいところ既に見られちゃってんだからさ…」
福田が高橋に耳打ちした。
「やった!」
武井が握りこぶしを高く差し出した。
「それじゃ早速…」
吉岡が二人を促す。
福田は濡れたシーツを外し、
ひょいと自分のオネショ布団を抱えると、縁側に下りていった。
高橋も少し遅れてそれに続く。
二人は物干し竿に並べて布団を干した。
2枚のオネショ布団が夏の初めの太陽に照らされる。
参加者たちも縁側に降り、めいめいの場所からそれを眺めた。
「おぉ…これこそオネショ」
「懐かしい」
「こんな風景、見なくなったよなぁ…」
口々に感想を述べる参加者たち。
「申し訳ないけど布団の横に立ってもらえませんか?」
小森が高橋たちに懇願した。
二人は何も言わず各自のオネショ布団の前に立つ。
浴びせられるたくさんの視線に二人は恥ずかしくなり俯いた。
「おぉ!恥ずかしがってるところがまたそそるなぁ…」
小森が嬉しそうに言う。
「写真に収められないのが本当に残念だよ…」
板橋が言った。

その後大広間で簡単な朝食を取り、
この『オネショ観察会』も解散することとなった。
「高橋君、福田君、本当にありがとうございます」
矢部が深々と頭を下げた。
「よかったよ」
「いいもの見れた!」
「素晴らしかった!」
口々に賞賛され、二人はこそばゆい気持ちだった。
「この先ですが、きっと二人の環境はいい方向に
 向かっていくと思います。僕たちも微力ながら頑張ります!」
吉岡はそう言うと参加者の方に顔を向けて
「能力区分法廃止に向けて頑張ろう!」
檄を飛ばすと、参加者の皆がこぶしを振り上げ
オー!!と叫んだ。
今の高橋と福田二人には、とても勇気付けられる言葉だった。
どんな風にいい方向に向かうのかは全く予想できなかったけれど。